【マンスリーアーカイブ】4月テーマ 新旧アットリーニから見るその仕立ての伝統と歴史①

こんばんは。
Artigiano-Tokyo Ginza(東京銀座店)です。

東京銀座店がこのマンスリーアーカイブのコラムを担当するようになって2年半が経とうとしています。
White Kingsとのコラボ店として発足して3年、東京銀座店が新たな情報発信の場として機能するようになり、単なる分店としての立場ではなく『クラシコイタリアを知らない/よく分からない/もっと知りたい』という人のためにより活動を続けていきたいと思っております。
ブログを続けるのは大変な作業でありますが、少しでも当店をご利用いただく皆様に喜んでいただけるよう、東京銀座店はお客様目線の営業を続けて参りたいと考えております。

今後ともどうぞ宜しくお願いします。

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今回のテーマは当店が最も得意とし、既成ブランドで最も評価しているクラシコブランド『Attolini(アットリーニ)』を深く掘り下げます。

Cesare Attolini

クリックすると本国サイトへジャンプします。

1月のテーマ『構築』でも大きく取り上げたアットリーニですが、創業から現在まで高い仕立て技術を維持し続ける稀有な存在です。
実際、高く評価しているのは当店だけではなく、服飾評論家やクラシックスタイルを愛するビジネスパーソン、そして愛好家を含めその評価はおおよそ一致しています。

日本ではBrioni(ブリオーニ)・Kiton(キートン)の知名度が勝っているものの、盤石な地位を世界的に獲得しており、”世界3大ブランド”の中では、モノ作りの本質に重きを置く人々に愛され続けるブランドです。

なぜこれほどまでにアットリーニは熱い支持を受けるのか?それは上記の通りモノ作りの本質を通して『誰に着せても格好良い・高得点を叩き出すスタイリングと着心地』を実現してるからだといわれています。

『ナポリスタイルは本来英国的だ。』という話を1月のテーマでお話ししましたが、1930年代ごろまでナポリの紳士は典型的な英国の装いでした。
お洒落は我慢という言葉通り、ナポリの温暖(すぎる)な気候のさなかでも、分厚い生地も、身体を固定するかのような着心地も、受け入れていました。それほどまでに、紳士と言えば英国スタイルを徹底することだったのです。

その流れを変えた一人がアットリーニの初代当主:ヴィンツェンツォです。

故: ヴィンツェンツォ・アットリーニ。撮影時期は不明だが壮年期と思われる。1930年にすでにunstructuredなジャケットを完成させていた。アルマーニが「ソフトスーツ」を世に流行らせる遥か昔に、である。もっとも、ソフトスーツはこのナポリ流の仕立てが元ネタだ。非構築的な手法で構築を作り出す。一見矛盾しているような言葉だが、人が着ることで完成する服という奥深さには、考えさせられる。出典:Attolini

彼は1930年代、すでに誰も見たことのない新たなジャケットスタイルを考案しています。この仕立てこそが現代の『ナポリ仕立て』の原型の一つとされています。

ナポリ仕立てはハンガーやトルソーに着せた状態では本来のシルエットがほとんど出ないことで知られていますが、それはナポリ仕立ての本質を表しています。
ヴィンツェンツォ氏は、かつて何度もこのように述べたとされます。

『優れた仕立て屋とは、不完全な体に不完全な服を作る職人にほかならない。』

彼は『”完璧な洋服”を作ることが、完璧な仕立てではないのだ』という本質に辿りつき、不完全と不完全が調和することで初めて最高の仕立てになるという理念に基づいて、ナポリ仕立てを完成に導いていきます。

実際、1960年代ごろまではナポリ仕立ては『alternative=英国服の代替要素』と評されてきましたが、20世紀末にその評価が一変してしまったことは、皆様も知る通りです。

ナポリ仕立ての洋服は構造だけを見れば驚くほどシンプルです。
パッドも、硬い芯材も、裏地もない。ジャケットのディティールを構成する要素だけが残り、トランクケースに小さくたたんで持ち運べるほど、その仕立ては大胆でした。

従来の窮屈なまでの様式美や、拘束具のような重さからの解放だけでなく、自己の表現をドレススタイル分野にもたらした革新的な仕立ては、同時期にイタリアで起こった芸術運動と比較されることもあります。
イギリスの仕立てとイタリアの仕立てはどちらが優れているか?ではなく、『何を本質ととらえ、アウトプットしているのか』の違いです。そういった意味では、芸術や音楽に正解がないように、それぞれが望む、好む世界を追求しているきわめて求道的でストイックな業界であるといえるでしょう。

ナポリ仕立てはクラシックでありながら前衛的であり、今と未来を生きる人々のために生み出された仕立てなのです。

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そういった背景を知ると、アットリーニの仕立てが『モダンであり、クラシック』であること、そして現代まで高い仕立て技術を守り続けている理由が、それとなく見えてきます。

ヴィンツェンツォの息子のうち、3男であるチェザレ氏がこの仕立てを既製服として打ち出し、世界に認められてからもうすぐ40年が経とうとしています。

在りし日のチェザレ・アットリーニ。初代:ヴィンツェンツォのDNAをここまで昇華させたのは彼の手腕も大きい。1980年代後半にナポリに凱旋した彼は息子らとともに既成ブランドをスタートさせる。生前の彼は常に縫製工場内を歩き回り、すべての工程に目を光らせていたという。 出典元:Cesare Attolini: the history of the Neapolitan style

温暖な気候である日本はナポリ仕立てとの相性がよく、世界でもその仕立てが広く受け入れられた国の一つです。
ビジネスパーソンにとってストレスを感じさせない着心地は思考や行動を効率化させる大切な要素であり、かつ自己表現と相手への敬意を両立できる仕立ては自身の強力なパートナーとなります。

アットリーニは誰もが格好良いと感じるであろう、イギリスの構築的な要素を備えつつ、構築的な洋服が苦手とする『万人へのジャストフィット』を高いレベルで実現しています。
『中途半端にフルオーダーするならアットリーニを利用する』と述べる人々がいるように、多忙な日々の中最速で最適解を求める人々から支持を受けるのも、この既製服の概念を超えたフィッティングから来ています。

今回の特集では、旧名義であるSartoria Attolini(サルトリア期)と、現ブランド名であるChesare Attolini(チェザレ期)の仕立てを徹底比較。その歩んだ歴史と解釈の変貌、『今と未来』を生きる人々にClassicと似て非なるClasicco(クラシコ)を提案し続けるビッグブランドの魅力に迫っていきます。

【オーナー在店期間のお知らせ】

今月の在店期間は4月20日(土)・4月21日(日)の2日間。
在店期間中は毎月恒例の『トレードアップフェア』を開催。
お手持ちのクラシコウェアを下取りに出し、クラシコ最高峰の仕立てを手にしてみませんか。
即時下取り/お買取りが受けられますので、決心のついた商品がある方はぜひお手持ち品をご持参ください。
この機会にご来店をお待ちしております。

Artigiano-Tokyo Ginza

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