8月マンスリーテーマ「伝説は今、紡がれる」。

こんにちは。
Artigiano-Tokyo Ginza(東京銀座店)です。

7月、オーナー丹下は毎年恒例のイタリアへ買い付けに行ってまいりました!
現地の街を歩き、人と話し、文化に触れながら、今回もオーナーならではの視点で選び抜いた逸品たちを仕入れてまいりました。

イタリア滞在記はこちら

 

今回は8月のテーマは、ローマで最も格式高い
ビスポークシューズブランド『マリーニ』を、半世紀以上前の作品2足の紹介を交えながら当ブランドの歴史に触れていきます。

50〜60年前、2代目オーナー兼職人の手によって仕立てられたビスポークシューズ。 オーナー丹下がローマの工房に何度も足を運び入手した作品。 現代のマリーニにも通じる普遍的フォルムと、手仕事の緻密さを極めた逸品。

 

イタリア・ローマ。
スペイン広場からほど近いフランチェスコ・クリスピ通り97番地に、120年以上変わらない空気を湛える小さな工房を構えるMarini(マリーニ)
創業以来、世界中の王族や映画人、そして真の愛好家たちに「人生を共にする靴」を届け続けてきました。

1899年、初代 ジュゼッペ・マリーニ 氏が工房を開き、同時に靴職人養成学校を設立。
その卓越した技術は瞬く間に評判を呼び、各国の要人や上流階級が顧客となります。


1966年に創業者が他界した後、息子として家業を受け継いだのはフェリーチェ氏、ベネデット氏の2人

職人としての軌跡や作風の詳細は公開情報が非常に少ないですが、二人の次の世代(カルロ)への橋渡しを果たした世代とされています。

1960年代、3代目 カルロ・マリーニ の時代に工房は黄金期を迎えます。
ローマが世界的ファッション都市として輝いたこの時代、
マルチェロ・マストロヤンニ、アンナ・マニャーニ、グレゴリー・ペック、セルジオ・レオーネらがマリーニを愛用。
モロッコ国王ハッサン2世やイギリスのエリザベス女王、ジャンニ・アニェッリなど、世界のVIPもその顧客に名を連ねました。

カルロ氏は一足を最初から最後まで一人で仕立てる伝統を守り、生産数は1カ月でたったの4、5足。年間でわずか50足程という少量生産を貫きました。
その希少性と完成度が、マリーニを「幻の靴」と呼ばせたのです。

現在は4代目 ダニエレ・マリーニ が工房を率い、その右腕として日本人職人 山本氏 が支えます。
14歳から工房で修行を重ねたダニエレ氏は、30代後半の若さにして伝統的な“ローマ式”の靴作りを守り続けています。

派手な広告や大量生産は行わず、顧客一人ひとりに向き合い、
採寸から木型製作、仕上げまでを少人数体制で行う。その姿勢は創業時と変わりません。

 

 

120年以上の歴史を重ねる中で、数々の逸話を持つマリーニ。
しかしその歩みは、華やかなメゾンの歴史とはまた異なる、静かで揺るぎない重みを秘めています。

ガットと並びローマのビスポークの双璧と呼ばれた当ブランドですが、ガットは既にブランド自体がなくなってしまい、今や創業時から変わらぬ哲学を守るのは
マリーニだけです。

マリーニがただ昔ながらのスタイルを守るだけでなく、今日まで存続することができた理由、
それは、創業時に生み出したスタイルが120年を経た今もなお、決して古びていないからにほかなりません。

50〜60年前、マリーニの2代目時代の外羽根式フルブローグ。
つま先の形は、ブランドを象徴する伝統的なスクエアトゥで、シャープさと柔らかさを兼ね備えています。デザインは控えめながら、靴全体から漂うオーラは格別。細やかなメダリオンやブローギング(穴飾り)、均整の取れたプロポーションが、熟練職人による手仕事の証。2代目マリーニについての記録は多く残されていませんが、この一足を目にすれば、初代の意思をしっかりと受け継いだものづくりであることが伝わってきます。シンプルでありながら品格に満ちた一足は、履き手の足元に静かな存在感を与えてくれます。25.0~25.5㎝

マリーニの靴は、革の裁断から縫製、底付け、仕上げまですべて手作業
特に特徴的なのは、コルクや金属シャンクを用いず、革だけで土踏まずを形作る内部構造。
履き始めから足当たりが柔らかく、長時間歩いても疲れにくい靴を実現。
ヒールも革を一枚ずつ積み上げる伝統製法で、美しい曲線と安定感を生み出します。

創業以来こだわるのは柔らかさと上質さを兼ね備えた革。
南米産のラマ革、インド原産ゼブー牛革、最高級ボックスカーフ、さらにはヴィンテージのロシアンカーフに似た極上グレインレザーまで
多彩な素材が揃います。

デザインは極めてクラシック。
ほんのり角のあるラウンドスクエアトゥ、足型に忠実な立体フォルムは、派手さはなくとも見る人が見れば一目で分かる完成度です。

50〜60年前、マリーニの2代目時代に仕立てられた外羽根式フルブローグ。先にご紹介した個体と同じオーダー主による作品です。色は、ヴィンテージ家具を思わせる深みのあるダークブラウン。半世紀以上前に作られたとは思えないほど、革は柔らかく、みずみずしささえ感じられます。スクエアトゥを基調とした端正なシルエットに、繊細なメダリオンとブローギング(穴飾り)が映える一足。当時の職人が注いだ時間と技術、そして履き手との関係が、この靴の佇まいから静かに伝わってきます。

マリーニの真価は、新品よりも履き込んだ後の姿にあります。

5年、10年と使い込み、手入れを重ねた靴は、艶やかな風格を帯び、履き手と共に歳を重ねていきます。

50年前のヴィンテージと現代の作品が並んでも、本質は変わらない。
それは「変えない」という選択を貫いたからこそ実現した普遍性です。
流行や形骸化した“クラシック風”ではなく、いま履いても通用する凄みがあります。

 


 

 

このたび当店は本国の工房と新たな繋がりを頂くことができました。

先代の半世紀以上前の希少な作品や未使用品など、現地でしか出会えない
まさに”伝説級の逸品”たちが東京銀座店に並びます。

当店がクラシコという文化、ものづくりを後世に残したいという想いからショップを開いて
20年近くが経とうとしています。その試みに歴史あるブランドから協力の意を示して頂いたのは
服屋冥利に尽きます。

10周年を迎える東京店が、皆様に『本物の靴』をお届けできる準備を始めております。

8月はその序章となるテーマです。Instagramの投稿ではマリーニより
お納め頂いたスペシャルなアイテムたちをご紹介してまいります。

【オーナー在店日のお知らせ】

 

8/9(土)~11(月祝)の3日間は、
名古屋本店オーナー 丹下が在店いたします。営業12〜19時

期間中は、毎月恒例のトレードアップフェアも開催。
サイズアウトしてしまったお洋服や、趣味が変わって履かなくなった革靴など
ぜひ店頭までお持ちください。

大切にされてきたものを、次の方へ。
そんな出会いが生まれる3日間です。

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