1879年、チャールズ・ジョーンズ兄弟と、ジェームズ・クロケットによってロンドン北西の都市である靴の聖地ノーザンプトンに設立されました。
CROCKETT & JONES社は、その伝統的手法と最高レベルの品質で世界中に知られている英国のシューメーカーです。
4代目にあたる今でもファミリー経営が続けられており、受け継がれた自社工場によって創業時から変わらぬポリシーの靴造りが行われています。
大量生産を避け、一足を作るのに約8週間を要するグッドイヤーウエルト方式の採用や、防水性を持たせたベルトショーン製法など、伝統的な手作業の製法が守られてきました。
ハンドメイドの木型、そして十分に吟味された底材など約200パーツから一足の靴が構成されています。
各工程には機械が多く使われていますが、それはあくまで優雅な靴を作るべく小さな工程をも省略しないための策です。
その証拠に約170名もの職人を動員し、200工程もの手間をかけて一足一足丁寧に作っています。
革のサウナを設けているのもその一環。創業以来の「高品質商品の提供」というポリシーは、今も健在なのです。
表革には、ベジタブルタンニングされたカーフや、最高級のスウェ ードなど選りすぐられた素材を使用しており、年月を積み重ね履き込む程に味わい深い表情を見せてくれます。
最高級の素材と熟練職人による徹底した丁寧な手仕事によって造られた“逸品”と呼ばれるにふさわしいこれらの靴は英国では常にトップの売上高を誇り、1990年には女王陛下より賞を授与された程です。
極めて多くの一流アパレルブランド靴のOEMも手掛けており、暫くの間はそちらに重きを置いていましたが、
現社主のジョナサン・ジョーンズ氏が指揮を執るようになってからは自社ブランド重視の体制に。
また、それまで生産を行なっていたレディスを「流行に左右されてしまう」との理由から取り止め、生産ラインを一生履ける優雅なメンズのためのみに切り替えました。
クロケットの日本での人気は絶大で、有名セレクトショップが競い合うように店頭に並べる程で、ビームスやシップス、アローズ、エディフィス、トゥモローランド、ドレステリア、バーニーズ・・と枚挙にいとまがない程です。
クロケット&ジョーンズでは、靴の製作工程に於いて最も重要な作業のひとつである釣り込み(アッパー革を木型に沿って成型させる作業)をよりしやすくするために、「サウナルーム」と呼ばれる小部屋にアッパー革を吊しておく時間を設けています。
所要は24時間。温度や湿度の状況はまるで逆ですが、それはまるで生肉業者の貯蔵庫のような光景です。
生身の人間は長く入っていられないほどの熱気と湿気の中にアッパー革を吊しておくことで、それが柔軟になり、強引な熱処理と違って自然な形と光沢とを与えてくれるのです。
それが、優雅な靴を作るためには欠かせないという考えなのです。
流石にロウ・マテリアル(生の素材)を使っているだけあって、その工程にはこういったアナログ的な要素が強いです。