こんばんは。
Artigiano-Tokyo Ginza (東京銀座店)です。
今月のマンスリーアーカイブも後半に入りました。
前回のカンパーニャ/ドメニコカラチェニは、サイジングがややビッグサイズに偏っていましたが、今回のテーマであるLIVERANO&LOVERANO(リベラーノ)は、44-46(S-M)の展開が豊富です。
袖丈も比較的長いものが多く、若く現代的な体型の方にも十分にお楽しみ頂ける機会となりました。
皆様のお越しをお待ちしております。
ところで、最近はヴィンテージブームでビッグシルエットのスーツを着こなす方が増えています。
ビッグシルエットは時代の移り変わりの中で何度も流行しており、今まさに旬なトレンドと思います。
反面、当店が扱うクラシコイタリアというジャンルは、クラシックを源流としているので、”ジャストサイズ”で着るのがセオリーです。
実は、これには服ジャンルが持つ思想だけではなく、洋服の”設計の違い”が大きく関係しています。
よく勘違いされますが、実は”ビッグシルエット”と”ルーズフィット”は、似て非なるものです。
ビッグシルエットは、それ専用に芯材やパッドを活用し、ビッグシルエットでキマるようデザインされています。
オーバーサイズに見えて、そのサイズで着こなすことをきちんと計算し、作られているのです。
ただサイズの許容範囲が広いので、オーバーサイズ気味でもあまり気にならないという面はあります。
対してクラシコイタリアの洋服は、基本的に芯材は薄く、人の骨格・肉付きにピタッと張り付くように設計されています。徹底したジャストフィッティングで、その人の体型を活かすという考えが根底にあります。洋服の仕立て段階で、既に想定する着こなし方が違います。
そのため、当店で販売するクラシコイタリアの洋服は、オーバーサイズを着ると直ぐにサイズが合っていないことが分かり、ルーズでだらしなく見えてしまいます。どちらにせよ、『ただ大きなスーツをオーバーサイズで着ても、それはビッグシルエットではない』ということなのです。
その洋服本来の持ち味をスポイルしてしまわないよう、スーツを着こなすうえで、それぞれの洋服が持つ意味を間違えないようにしたいところです。
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前置きが長くなりましたが、リベラーノのディティールに関する後半コラムになります。
ブリオーニが”視覚”で感じるパワーならば、リベラーノは”嗅覚”で感じ取るパワー。
もっと言えば、第六感・直感的な感性が、パワーとして込められている、ということを前回のコラムでお伝えしました。
では、その感性豊かなパワーの正体とは、何なのでしょうか。
リベラーノのディティールの特徴として、
・直線的でしっかりとられた肩線
・斜め後ろ(背中側)へ逃げていくショルダーライン
・低めで、肩線とリンクしたゴージライン
・大ぶりでゆったりとしたアームホール
・急激に収束するウェストライン
・フロントダーツが廃された前身頃
・どっしりとしながらも華やかな生地使い
・華やかに開いたフロントカット
…などが挙げられます。
肩線は、薄い芯材で力強く張り出し、”ハの字”に描かれます。
ゴージは肩線と並行気味で、それぞれの線に連続性があります。
そして、アームホールが大きくとられていることで、正面から見るとアームの付け根が大きく弧を描くように見え、男性の逞しい腕を想像させます。
リベラーノのジャストサイズをお召し頂くと、初めての方はほぼ必ず『肩、ちょっと大きくないですか?』『落ちてないですか?』と心配されます。
これはリベラーノのハウススタイルです。
肩先のギリギリまで直線を保ち、鍛え上げた肉体のような肩線を作り出しています。
英国スタイルとも違う肩ラインは異質でありながらも、指先で触れると確かに肩先で『ピタッ』と揃っています。決してオーバーサイズというわけではありません。
そして、たっぷりとした上半身から一転、急激に絞られたウェストの凛々しさ。
ここまでのディティールを乱暴に表現すれば、『逆三角形』『男っぽさ』を強調するシルエットです。
しかし、ここだけにフォーカスしてしまうとリベラーノの本質にはたどり着けません。
リベラーノは、女性のボディラインにも似た”連続性のある曲線美”で表現されています。
極力ダーツ*を廃し構造をシンプルにすることで、表皮=人の肌のような継ぎ目のないシルエットを実現しています。これがフィレンツェ仕立ての大きな特徴です。
*ダーツ=服を立体的に縫製するために縫いつまんだ部分
文章にすると簡単ですが、立体縫製で非常に重要な技術であるダーツを”廃する”ということは、相当なことです。何も考えずに作れば非常に平面的なスーツが出来上がります。
感覚だけでなく、極めてロジスティックな設計、卓越したアイロンワークを駆使しないと、この仕立ては実現できません。
後ろに逃げた肩線も、絞られたウェストラインも、フワッと華やかに開いたフロントカットも…
全てが人の肉体の一部のよう。これが、ただ無骨な男性らしさだけではない、女性的な”色気” ”華やかさ”にも繋がる理由です。
併せて、リベラーノはその絶妙な色彩づかいが大きな武器です。
多くの商品が並んでいても、何となく『あの生地はリベラーノのチョイスかな…』と感じてしまう存在感。
他のフィレンツェ仕立て…いや他のサルトリアには真似できない色彩センスと言っても良いでしょう。
※スタッフは生地センスではリベラーノが一番好きです。
これらの要素が緻密に積み重なることで、先のブログで触れたようなアンドロギュノス的な”完璧な調和”が生み出されると言えます。
リベラーノがいちサルトリアに留まらず、現在のようなトータルファッションブランドに成長できたのも、当サルトリアの圧倒的な美的センスが、大きく影響しているでしょう。
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クラシコイタリアは、洋服に含まれるどの要素が欠けていてもいけません。リベラーノもそう。
例えば、特徴的な肩線だけを真似しても、”リベラーノ”にはなりません。
手仕事を通して、服に宿る温度感がリベラーノ”らしさ”を帯びていることが重要なんじゃないかな。と当店は考えています。
現在、東京銀座店のリベラーノの在庫数は20着近く御座います。
これらの展示は7月31日(日)までとなります。
そして、今月の
『TRADE UP FAIR(トレードアップ・フェア)』
は、明日22日(金)から3日間開催となります。
7月22日(金) ~ 7月24日(日)
OPEN 12:00~20:00
【トレードアップフェアとは】
名古屋本店オーナーである丹下代表が、その場でお客様のクラシック衣料をその場でお買取り*。
そして、お買取りだけでなく、当店の商品へのお買替えで査定を大幅にUP。さらなる上質なクラシックウェア=クラシコイタリアへとお客様の衣料品を”トレードアップ”いたします。
*お買取り可能なブランドについては、こちらをご覧下さい。
丹下代表は、現在服飾講師としてマルチに活動中。
NHK文化センター服飾講師ほか、多方面でクラシックウェアに関する講演活動も行っております。
在店期間中は、オーナーによる服飾コーディネートや、クラシコイタリアに関する情報交流なども行っております。単なる販売に留まらないご提案や交流の場としてご活用ください。
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この度WEBファッション誌『FORZA STYLE(フォルツァスタイル)』のYouTubeチャンネルにて当店を取り上げて頂きました。
『つぼウォーク×腕時計魂 コラボ企画』
https://www.youtube.com/watch?v=3PtUPKrG8J0
https://www.youtube.com/watch?v=6iA8molNId4&t=0s
※第二部が当店メインパートとなります。
最近当店をお知りになった方は是非youtubeチャンネルの配信をご覧頂き、当店がどのようなお店なのか、知って頂ければ幸いです。
今回も皆様のご来店を心よりお待ちしております。
Artigiano-Tokyo Ginza