6月マンスリーテーマ「Elegance with Intent 」-意志が宿る佇まい-

こんにちは。Artigiano-Tokyo銀座店です。
GWも明けて本格的に蒸し暑い季節になり、ジャケットを着れる期間はもあとどれくらいなのか、
とつい考えてしまうシーズンとなりました。

そんな6月のテーマは「Elegance with Intent」 -意思が宿る佇まい-。
今月はローマ仕立てにフォーカス。数あるサルトリアの中でも
ブリオーニとガエターノ・アロイジオを通じて当仕立ての“設計された気品”を探ります。

 

ナポリ仕立ての柔らかさ、ミラノ仕立ての直線的構築。
ローマ仕立てはその両者を内包し、「構築に内面性を宿す」独自の哲学を打ち立てました。
肩にわずかにロープを入れ、胸板を薄く張り出し、ウエストを緻密に絞る。
そのすべてが威圧ではなく、「品位を設計する」ために機能します。

なぜローマ仕立ては世界に通用するのでしょうか?

それは古代から続く「仕立てそのものに品位を込める文化」があるからです。
派手な装飾ではなく、肩先の丸みや胸の張り、ウエストの絞りといった服の構造で
「この人には節度や知性がある」と非言語的に伝えます。

古代ローマではトーガの折り目ひとつに権威を込め、中世以降の教会や官僚も装飾より仕立てを重視、ルネサンス期には教皇の礼服にその思想が顕現しました。

※トーガは、古代ローマ市民が公的行事で着用した半円形の大きな布を体に巻きつける衣服で、着用できるのは市民に限定され、身分や権威の象徴とされました。

現代では、ブリオーニやガエターノ・アロイジオという名門がこの伝統をさらに研ぎ澄まし
派手さを抑えつつ「細部の完成度」で着る人の重みや意思を際立たせています。
その結果、どの国に行っても「服の構造が放つ凛とした佇まい」が評価され
ローマ仕立ては普遍的なエレガンスとして受け入れられています。

 

 

今回のテーマの主軸であるブランドの一つブリオーニについてご紹介いたします。

1945年にローマで誕生したブリオーニは“イタリア流の軽快な構築美”を掲げ、当時の紳士服を一変させました。
戦後まもなくの欧米では、肩幅の広いボックスシルエットが標準でしたが、ブリオーニは英国サヴィルロウ由来のテーラリングをベースに、あえて薄手のキャンバス構造を採用。
副資材を極力削ぎ落とすことで、身体に沿うスリムなラインと着心地の軽快さを両立させたのです。
このアプローチが1950年代に「コンチネンタルルック」と呼ばれたもので、つまり「アメリカ式のゆとりよりもヨーロッパ本場のスマートさを重視し、華美な装飾ではなく仕立ての完成度そのものを誇るスタイル」を意味します。

 

細く絞られた肩幅、滑らかなドレープ、裾の微妙なカットで脚長効果を演出。
身にまとうだけで背筋が伸びるような佇まいは、欧米の社交界やハリウッドスターを魅了し、
一気に世界中に浸透しました。

その後もブリオーニは常に「ローマ仕立ての本質」に立ち返り、素材や設計の探求を続けます。
1960~70年代には、ウール×シルクといった新しい生地を開発し、見た目の光沢と軽やかなタッチを両立。派手な柄は避け、布地そのものの風合いで“静かに語る”エレガンスを追求しました。

1980年代の“パワースーツ”全盛期には、厚めの肩パッドと低めのラペルを組み合わせながらもキャンバスを薄手に抑え、「重厚感と軽快さ」という相反する要素を同時にかなえるスタイルを確立。
これもまさに「格式ある構築性」と「着用時の自由さ」を高次元で融合させるローマ仕立てらしい挑戦でした。

1990年代以降、スリム化の波が高まるなかでも、ブリオーニは「原点回帰」ともいえる動きを見せます。
流行に流されることなく、往年のクラシックなフィット感を再評価し、本来あるべき“適度なゆとり”と“端正な絞り”のバランスを見直しました。加えて、創業期の型紙をモダンにアレンジしたスーツを投入し、「伝統を重んじながら必ずアップデートする」という揺るぎない姿勢を示します。

ブリオーニ「マディソン」スミズーラ 3ピーススーツ(44-46相当) ローマ仕立ての新たな解釈として登場したマディソンは、ブリオーニが誇るクラシックとモダンの融合モデル。ビスポークの醍醐味を感じられるスミズーラ(パターンオーダー)。息を飲むほどのドレープ感はさすがブリオーニと思わせる一着。

その結果、2000年代後半以降も「ブルニコ」「マディソン」といった現行コレクションで、より洗練された細身プロポーションと軽量構造を開拓。幅広い体型を包みつつ、新鮮なシルエットに仕上げることで、世界中の顧客から支持され続けています。

ブリオーニが革新的なのは、単にシルエットを細くすることに留まらず、「仕立ての中にこそ意思や品格を込める」という根本を決して忘れないこと。高価な既製服ながら、副資材や工程を微調整して価格帯を分けることで、より多くの顧客にその美学を体験させようとする試みも行ってきました。
その柔軟さと誠実さが、時代を超えても変わることのない価値を生み出し、ブリオーニをローマ仕立ての真の革新者たらしめているのです。

 

 

 

一方のガエターノ・アロイジオは、ローマを代表するサルトリアとして知られています。
カラブリア出身のアロイジオ氏は22歳でイタリア最高の仕立て賞「フォルビッチ・ドーロ(金の鋏)」を受賞し、1990年にローマ中心のサロンを開設。既製服を一切手がけず、すべてをフルビスポーク(完全オーダー)で仕立てるその空間は、まるで現代アートのギャラリーのようです。

 

ガエターノ・アロイジオ 紺無地 ダブルジャケット Size:42-44。 肩周りに軽い副資材を使用し、見事なコンケープドを表現。 高めでキュッと引き締まった脇下と弧を描くショルダーラインは フロントを開けても見事に維持されます。 ダブルジャケットの威厳さとローマらしい華やかさが同居した一着。

仕立ての特徴は「構築的でありながらその存在を感じさせないソフトさ」。
肩先には軽やかなロープが入り、胸には自然な張りと陰影を与えつつ、ウエストは緻密に絞り込む。ラペルの返りは一針ひと針が織りなす陰影で表現され、ステッチワークはまるで絵画を思わせる緻密さを誇ります。こうした手仕事すべてが「品格を形にした構造」として昇華され、まるで着る人自身の意思を映し出すような佇まいを生み出します。

この圧倒的な技術は、政治都市ローマで培われた「装いとは非言語的に権威を伝える手段」という伝統を、現代において最高度に体現したものです。身にまとうだけで周囲からの視線が変わる。
まさに「意志が宿る佇まい」を、ビスポークスーツのかたちで具現しています。

過去紹介記事

 

 

6月は、「Elegance with Intent ─ 意志が宿る佇まい」というテーマの下、
ブリオーニとガエターノ・アロイジオが追い求めるローマ仕立ての本質を代表作を通して
ご紹介いたします。日本での流通がほぼなく、見る機会さえ稀なガエターノ・アロイジオや
ヴィンテージのブリオーニが、今月だけ東京銀座店に集結します。

この貴重な機会に、ぜひ憧れのローマ仕立てを通して「意志が宿る佇まい」を体感しにいらしてください。

 

 

【イベント開催のお知らせ】

6/14(土)6/15(日)はコラボ店 White Kingsditoによるコラボシューズ”ORLE”の受注会も同時開催。店舗内(銀座1-19-12 八木ビル3B)にてditoの全てのモデルも受注頂けます。

Special thanks. SHAMS

※当日は特別協賛としてSHAMSによるポップアップストアも同時開催いたします。

今回のモデルはditoとしても初となる
“内羽根ストレートチップ”。

オーソドックスゆえに個性を出すのが難しいジャンルである中、White KingsがヴィンテージOMEGAに寄せる『ドレスとスポーツの融合』という魅力をWhtie Kings & dito流で表現しております。

イベント詳細はこちらよりご覧くださいませ。
※イベント開催期間中も通常通り営業しております。

 

オーナー在店日のお知らせ
6月は28(土) 29(日)東京銀座店にオーナー在店しまして、即時お買取り&お買替えトレードUPお得フェア、🇮🇹現地情報ご提供、コーディネートアドバイスを開催します。

 

この機会に皆様のご来店を、心よりお待ち申し上げております。

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