Artigiano ciao 東京銀座店です。
前回のブログで触れました、
今回初特集となるサルトリア
『フォルモサ』。
皆さんも気になるこのサルトリアのスタイルと
出自について言及したいと思います。
フォルモサはイタリアの仕立てを語る中では外せない、
仕立て界における大御所中の大御所です。
現地サルトリアで知らない人はいません。
(知らなければモグリでしょう)
実は先代のマリオ・フォルモサ氏は
最後のマエストロと称されるアントニオ・パニコ氏や、
故:フェリーチェ・ビソーネ氏
(『コスタンティーノ』の旧仕立て人)と
師を同じとしています。
その名はナポリ仕立ての開祖の一人:
ロベルト・コンバッテンテ氏です。
コンバッテンテ氏については過去のブログや
書籍『ナポリ仕立て 奇跡のスーツ』も
参照頂けたらと思いますが、
クラシコイタリアを語る上で必ず登場します。
その絶大な影響力は弟子が皆大成し世界で
活躍している点からも伺えます。
マリオ氏は複数のサルトリアを渡り歩いたので、
パニコ、ビソーネ両氏とはまた異なるアプローチで
コンバッテンテの教えを独自に昇華しています。
故ビソーネ氏(コスタンティーノ)が
コンバッテンテが引いた型紙に最も忠実で
あったのに対し、
フォルモサの特徴は構築的な英国仕立てを
ベースにしながらも現代的で柔軟な線を
引く点にあります。
個体により若干の差異こそあれど、
やはり共通するのは軽やかな構築です。
コスタンティーノの作品と比較すると、
肩のコンケープド(弓なりの曲線)は
コスタンティーノに比べて柔らかく
穏やかな印象でウェストの絞りも緩やかです。
深く開いたVゾーンは構築感の中に
程よいスポーティさと軽快感を与えており、
フロントを開いても美しいシルエット。
構築要素の中に取り入れた脱構築的要素が
強いハウススタイルという印象です。
※ナポリ仕立ては非構築という表現が使われますが、
当店としては脱構築要素であると捉えています。
現フォルモサは同じ顧客であっても再度仕立てる際は
新しい型紙を引くスタイルを取っています。
これはジェンナーロ氏はモデリスト/フィッター専属であり、
腕利きの職人ディオニジオ・ダリーゼと二人三脚で
仕立てを行っている点にあります。
※アントニオ・パニコなど仕立て職人本人が採寸する
場合は型紙を敢えて作らないケースも見られます。
分業制ゆえのスタイルとはいえ、
毎回型紙を引き直すというのはあまり聞きませんから、
これが彼らにおけるベストとして落ち着いたのでしょう。
前述の通り先代マリオはコンバッテンテ以外にも
複数の仕立て屋を渡り歩きましたが、
仕立て屋としての姿勢はコンバッテンテの影響を
間違いなく受けています。
稀代の人格者として知られたコンバッテンテ、
彼の人の不完全さと向き合う姿勢は、
顧客一人一人に向き合うという仕立てのスタイルで
フォルモサに引き継がれたと言えます。
さて、なぜこれほどまで著名なサルトリアを
今まで特集できなかったかというと、
とにかく個体数が集まりませんでした。
一時期日本でもオーダー会がありましたが、
コロナ渦もあり現在に至るまで継続はありません。
1.2着程度ではそのハウススタイルの
全貌が見えてきませんので、
やはり数を積むのはお店としての意地です。
当店もフォルモサにはイタリア出張のたび
足を運び続けましたが、
今回、数年がかりでのコンタクトの末
初めて個体を分けて頂けることになりました。
ジェンナーロ氏のご厚意に心から感謝申し上げます。
フォルモサは東京銀座店のスタッフも初めて
実物に袖を通しました。
構築的な仕立ての緊張感の中に、
意外なほど親しみやすさを覚える個体。
同時に今回展開する3ブランドの中でも
最も大人びた印象を受けるスタイルです。
そのハウススタイルから引き出される魅力を
是非店頭でご体感ください!
よろしくお願いいたします。
Artigiano ciao 東京銀座店