アントニオ・リヴェラーノは11歳のとき、古都フィレンツェに移り住む。
兄であるルイジの背中を追うように洋服の仕立ての世界に入り、以来60年近い歳月をサルトとして歩んできた。
アントニオ氏は1937生まれ、プーリア州の出身。
長靴の踵部にあたるプーリアもまた、独自の仕立て文化を育む。
バロックやロマネスクの貴重で美しい建造物が残るためか、非常にユニークな構築感を素朴な仕立のなかに宿す。
リヴェラーノ&リヴェラーノが仕立てる服は、そうしたプーリアの手がトスカーナで洗練されて完成された。
ルネッサンス文化が花開いた街”フィレンツェ”は、イタリア最大の服飾見本市ピッティ・イマジーネ・ウォモが開催される街としても知られている。
世界各国から集まったバイヤーたちの目的は、最新トレンドをここでチェックすることともうひとつ、フィレンツェの洒落者たちが通う、名サルトを訪れることにある。
その名もここに紹介するリヴェラーノ&リヴェラーノだ。
サルトリア・フィオレンティーナそのものを代弁するこのサルトの最大の特徴は、脇見頃ダーツを取らずにウエストラインをすっきりみせるシルエットと、肩のラインが背中側にぐっと落ちた構造にある。
そうすることで、じつに華やかで優雅な雰囲気が醸される。
北イタリアやナポリからは見受けられない強い個性に裏打ちされたスタイルだ。
華があり、どこか優雅さをたたえている服の背景にあるのは、14世紀から連綿と受け継いできた芸術的感性にほかならない。
一瞥するだけでそれとわかる独特の色と香り、それこそが、サルトリア・フィオレンティーナの精神である。