パニコ、チャルディ、ピロッツィと共にナポリの4大サルトと称されるマエストロである天才肌のジェンナーロ・ソリト。
創業者の父ルイージは巨匠ヴィンチェンツォ・アットリーニの弟子であり、正統かつ最高品質のナポリ仕立てを学んでいる。
ソリートの服は“のぼり”が大変美しく、動きに追従して体に吸い付くようにフィットしている。
ナポリのサルトリア界でもトップ・オブ・トップを走る彼らが得意としているのは、意外にも肩肘張らないスポーティさを備えた服。
重たいヴィンテージ生地よりも程よくしなやかな現代的な生地のほうが相性が良く、同じナポリの超一流でも、ルビナッチやパニコとは趣を異にする。
自然体でリラックスした若々しさがあって、その分着る人が構えない服という点では、ソリートの服は究極だ。
3代目のルイージは語る。
「副資材は極力省いて肩のラインを自然に出すことを大切にしています。
アームホールも鎌が浅いため、腕の可動域が広く、動かしても肩のラインが崩れません。
後ろ襟が首に吸い付いている私たちの服は、よくセーターのような着心地と形容されます。
それと、私たちはアピールしすぎる服を好みません。
例えばダブルのラペルの剣先は、上を向きすぎていたり横向きのものは主張が強く感じられるので、高さや角度も含めて自分たちが美しいと思うスタイルで収めています。
父の代になった70年代からスタイルはほとんど変わっていません。
私たちの伝統的なスタイルの特徴を強いて言うなら、スーツでもパッチポケットを好む点でしょうか」
一流サルトリアの服は流行に左右されることがない。
彼らの服作りの心はむしろ流行の対岸にある自分らしさ、すなわちスタイルを大切にすることにある。
サルトリア・ソリートにもぶれることのない普遍のスタイルがある。