こんばんは。
Atgitigiano-Tokyo Ginzaです。
来週には第2段の商品入荷が控えています。
”クラシコイタリア”と呼ばれる
クラシックの源流をゆく高級仕立ての中で
DALCUORE(ダルクオーレ/ダルクォーレ)
は特異な存在です。
長年、ダルクオーレはクラシコタリアという
伝統的なジャンルで異端扱いされてきました。
故・ルイジ氏が手掛ける仕立ては独特で
既存の”クラシコ”とは大きく異なります。
ときに現代的な機械縫製を大胆に使用するなど
賛否両論を巻き起こしてきました。
しかし近年は日本のセレクトショップなどで
ダルクオーレは改めて高く評価されています。
アトリエ訪問時。
時流に合うモノづくりをし、後継者もいる。
既成3大ブランド
(雲上系、ともいうべきでしょうか)
であるブリオーニ/キートン/アットリーニ
と比較しても手が届きやすい価格も魅力。
かつて一世を風靡したサルトリアが次々と
閉業・路線変更する中、ある意味先を行っていた
ダルクオーレが最もクラシックさを
受け継ぐサルトリアの一つになるとは、
少し皮肉にも感じます。
7月テーマでもあったリベラーノと並び
“アーティスト”と称された仕立て職人は
ルイジ・ダルクオーレくらいと思います。
在りし日のルイジ氏と。
ダルクオーレはどのような仕立てなのでしょうか。
ダルクオーレはナポリの仕立て屋ですが
ステレオタイプのいかにもなナポリ仕立てとは
テイストが違うと言えます。
非常に乱暴に表現すれば、構築的です。
ダルクオーレのハウススタイルは
ブリティッシュスタイルとは全く異なる
アプローチで仕立てたコンケープドショルダーと
ボリュームある胸周りや大きくドロップした
ウェスト、狭いアームホールに見合わぬたっぷりと太いアーム
などが大きな特徴です。
端的に表すと、タイトでグラマラス。
関西風に言えば”シュっとした”デザインです。
旧来のクラシコと比較すると、
腰まわりのくびれ=ドロップは特筆すべき点。
強調された胸周りに対して腰が急激に
絞られているのが分かります。
腰からお尻にかけてフレアがかかり、
絵に描いたようなXラインとなります。
参考:新入荷商品。
恰幅の良い体格より、
絞られた体格の方が映えるスタイルでしょう。
着用モデルにも比較的若年層が採用されるなど
細身で鍛えられた体格が意識されています。
薄い芯地で首の高い位置から始まる
襟位置などは肩の弓なりの曲線を強調。
これも絵に描いたようなハイゴージです。
強い絞りでメリハリを利かせたデザインは
一般的に『モダン』『モード』に分類されますが
ダルクオーレはこういったディティールを
本格的な手縫いを中心とした『本流』の仕事で
やってのけています。
『モダンは量産できる機械縫製のもの』
『手縫いこそクラシック』
そういった既成概念を挑発するような
スタイルです。
対して要所要所にクラシックな要素を
しっかりと盛り込むところも
ダルクオーレの大きな特徴です。
例えば、ダルクオーレの服を正面から見たときと
横から見たときでは『まるで別物の服だ』
と言われるほどに二面性があります。
コンパクトに攻めた肩に見合う
一見細身のアーム。
しかし横から眺めると、
横広なアームラインが
目に飛び込んできます。
こういった特徴あるアームと言えば、
形は違えど前回ご紹介したリベラーノの仕立てを思い起こさせます。
このたっぷりととられた肩周りには
大量の生地がいせ込まれており*
その一見タイトな見た目に反した
軽い着心地を実現しています。
*いせ込み=生地を立体に縮めて丸め肩穴に縫い込む技術。このいせ込みの量がしっかりとられていると肩の可動域が広がり着心地を向上させることができる。
ジャケットからパンツに至るまでの
一連の流れはまさにクラシック。
パンツにはクラシックなタックを採用し、
ヒップ周りの可動域にも寄与。
新旧一体。
クラシックなのに新しい。
存在だったダルクオーレは2020年代、
新たなクラシックのスタンダードに
なりつつあります。
一見奇抜で好き嫌いが分かれる
ブレンドとされてきたダルクオーレが
時を経てこのような評価に変わってきた
ことは、2000年代初頭からクラシコを
追い続けてきた当店としても感慨深い
ものです。
そのハウススタイルからも、
是非若々しくエネルギーに溢れる若者にも
着て頂きたい、と当店は考えています。
私たちはもうオジサンの部類ですが、
クラシコはもうオジサンたちだけの
ものではありません。
我々の世代から次の世代にバトンタッチ
していく存在です。
2020年の新しい価値観をもとに
これからの長い人生のパートナーとして
この服たちを迎え入れ、
さらに次の世代へと受け継いでいく。
そんな未来を夢描きながら
当店は営業を続けています。
Artigiano-Tokyo Ginza