明けましておめでとうございます。
Artigiano Ciao 東京銀座店です。
旧年中は、東京銀座店に足を運んでくださり、誠にありがとうございました。
10周年という節目の一年は服と向き合い
なぜそれを選ぶのか、どう付き合っていくのかを、改めて考える場面が多くあった一年でもありました。
昨年一年を振り返ると、店頭で交わされる会話の内容も少しずつ変わってきたように感じています。
素材や仕立てについての話。
その服が生まれた背景や、置かれていた時代の話。
ここ最近、服そのものを起点にした会話が増えてきました。
振り返ると、クラシックウェアを取り巻く環境は、この10年で大きく変わったように思います。

情報は増え、仕立てや素材についても言葉として整理され、
以前より理解しやすくなりました。
ただその一方で、それぞれの仕立てが
どんな前提や生活の中から生まれてきたのか。
そうした部分に触れる機会は
以前より少なくなっているのかもしれません。
服の違いが言葉の上では分かりやすく語られる一方で
判断の積み重ねや、背景にある文化や歴史までは
十分に共有されていないと感じる場面もあります。
当店が扱ってきたナポリの仕立ては、
設計や理論だけで完結するものではありません。
誰かが誰かのために仕立て、その人の生活の中で着られ、
役目を終えたあとも、なお手放されずに残ってきた服。
そこにあるのは、技術や様式以前に、
人と人の関係性が積み重なった結果としての一着だと考えています。
私たちが一年を通して、扱ってきた服やアーカイブをあらためて見返したとき
なぜそれを選び、なぜ残してきたのかという問いの先に
共通して見えてきたのも、そうした「関係性が服として残っているか」という視点でした。

当店がナポリ仕立てを語るとき、
「誰かが誰かのために仕立てた服」という側面だけで終わらせるつもりはありません。
それは多くのサルトリアに共通する、クラシックウェアの根本だからです。
2026年に、当店はアントニオ・パニコとチェザレ・アットリーニを軸によりナポリ仕立てにフォーカスしたラインナップを展開する予定です。
なぜこの2つのサルトリアにフォーカスするのか?
それは、この二つがナポリ仕立ての中でも源流に近い考え方と技術を色濃く残しながら、
同時に「黄金期」を支え、さらにその価値を外へ押し広げた存在だからです。

パニコは、ナポリ仕立ての黄金期を支えたサルトリアです。
アントニオ・パニコの仕事は、派手な表現や記号に頼らず、仕立てそのものの密度によって評価されてきました。
重衣料からスーツまで、服としての強さを保ったまま成立させてきた点に、
ナポリ仕立ての本流が色濃く表れています。

一方、アットリーニはナポリ仕立てを世界へ広げた存在です。
手仕事の質を保ちながら完成度を安定させ、既成服として成立させたことで、ナポリ仕立ては一部の愛好家のものから、文化として届く段階へ進みました。
個の完成度を突き詰めたパニコ。
仕立ての価値を外へ開いたアットリーニ。
この二つの系譜を軸に見ることで、ナポリ仕立ての成り立ちと広がりが、より明確になると考えています。
2026年は、パニコとアットリーニを起点に、他のサルトリアやブランドとの違いを
比較のためではなく、ナポリ仕立ての系譜を立体的に捉えるために掘り下げていきます。

その流れの延長として、オーナー丹下の在店期間のあり方についても、新たな試みを行います。
これまで行ってきたトレードアップフェアに加え、在店には名古屋店から丹下自身が選んだ品をトランクに詰め、東京へ持ち込むかたちでのトランクショーを行います。
常設ではなく、その日、その時間だからこそ目にできる品。
なぜそれを選び、なぜいま紹介したいのか。
現地での買い付けや、これまでの積み重ねを踏まえた話を、実物を前にしながら共有できる場にしたいと考えています。
この取り組みもまた、服を「情報として知る」のではなく、判断の背景ごと受け取っていただくための、ひとつのかたちです。

2026年の東京銀座店では、スーツやクラシックウェアを「難しいもの」「特別なもの」として扱うのではなく
生活の中でどう着られてきたのか。
そして、いまの暮らしの中でどう着られるのかを、現実的な視点で話せる場を増やしていきます。
服を前に、立ち止まり、考え、自分なりの基準を少しずつつくっていく。
その過程そのものが、東京銀座店で体験していただきたいことです。
2026年もArtigiano Ciao 東京銀座店を
どうぞよろしくお願いいたします。
