【ナポリ仕立てスタイル編~クラシコイタリア紳士服ファッションをイタリアの地域別に解説】

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いつも当店をご活用いただきまして、誠にありがとうございます。

こちらをご覧くださる皆様は”クラシコイタリアファッション”について、ある程度ご存知かと思います。

クラシコイタリアファッションはイタリアの伝統的なスーツ作りのスタイルで、ミラノ・フィレンツェ・ローマ・ナポリなどの各都市ごと独自に発展してきました。

イタリアは日本と同様に南北に細長く緯度の差があるため、気候も生活様式もかなり異なります。
そのため北から南までの各都市でスーツ・ジャケットの素材・仕様・仕立ての特徴や個性も異なります。

代表的な都市「ミラノ」「フィレンツェ」「ローマ」「ナポリ」だけをとっても各都市のスタイルの特徴はかなり違いがあります。

今回は25年4月のマンスリーコレクションで特集している「ナポリ仕立てスタイル」について解説したいと思います。

ナポリスタイルは自由を好み個性を大事にするナポリ人の性質によって、イタリアのクラシックスーツの中でも特に特徴的でバラエティに富んでいますが、そのどれもが伝統的な仕立てを基盤にした魅力的なスタイルです。

ナポリはその地理的な位置による気候や文化・歴史的背景からも、スーツ作りにおいて個性的かつ独自のアプローチを取っています。

そして多種多様な個性を持つサルトリアと言われる仕立て屋がイタリア全土の中で最も多く存在しているのもナポリなのです。

以下にナポリスタイルの特徴を詳しく解説します。

1. 軽快な仕立て

ナポリスタイルのスーツは、身体に立体的に沿うことをより大切にするために内容物/芯地を極力排除して仕立てるサルトリアが多く、非常に軽やかで着心地良いのが特徴です。

一部のブリティッシュトラッドのスタイルを強く残す伝統的なサルトリアのハウススタイルを除き、大方は肩パッドが薄いまたは排除されたナチュラルなショルダーラインを描きます。

この軽快さは南イタリアの温暖な気候や、ナポリ人の自由を好む特性や動きやすさを重視する文化から来ていると言われています。

従って生地もしなやかでしなやかで軽やかなものが多く、夏の季節でも快適に着ることができます。

このような軽快な仕立ては、1960年代にチロパーネ氏が創立した”Kiton”という優良既成服サルトリアファクトリーが世界的に成功してゆくことで典型的なナポリ仕立ての特徴として認知されていった歴史的背景があります。

一方で、格式と伝統を持つルビナッチ派(旧ロンドンハウス)では、構築的コンケーブドショルダーで今現在も仕立てを貫く有力サルトリアも存在しています。

 

2. ナチュラルでフィット感抜群な肩周り

ナポリ仕立てのスーツは肩線が自然で柔らかい印象を持ちながらも、グラマラスな立体美を感じさせます。

これは、肩に過度なパッドを使わず、職人の手によって生地が身体に沿うようなパターンとアイロンワークによって立体的に仕立てられているからです。

肩幅はややコンパクトにデザイン設計され、アームホールの袖付け技法マニカカミーチャ(シャツ袖付け)と相まって全体的に柔らかなシルエットを保ちます。

3. フィット感とカスタマイズ

ナポリスタイルでは、体型にぴったり沿ったフィット感が大切にされます。

スーツの仕立てにはサルトと言われる熟練職人が手間と時間をかけて手仕事によって個々の体型に合わせて調整されます。

このため、ナポリスタイルのスーツは非常に個性的で美しい立体感があります。

特にショルダーからチェスト~ウエストラインは立体的に流麗で、エレガントにシェイプが効いていることが多いです。

 

4. 前身頃のデザイン

ナポリ仕立てのスーツは、前身頃にも特徴的なデザインが見られます。

ボタンの配置やラペル(襟)の形や幅に工夫と個性が施されており、やや深めのフロントVゾーンが多く見られます。

これによりスマートで洗練された印象を与えます。

裾に向けてのフロントカットもスクエアからラウンドまで様々です。

5. 立体感のある背中のライン

ナポリスーツの特徴的なポイントの一つは、背中のシルエットラインが非常に立体的でグラマラスであることです。

肩から背中にかけても巧みなアイロンワークにより立体的で柔らかい作りになっているため、着たときに身体に劇的にフィットし、とても着心地が軽く、体が自由に動かせる感覚を覚えます。

”男は背中で語る”といわれるほど背中は重要ですが、この作りがナポリスタイルのスーツに洗練された曲線美と柔軟性のある機能にも大きく寄与しています。

 

6. 豊富な生地とカラーパレット

ナポリスタイルでは、生地の質感や色にも個性的なこだわりがあります。

しなやかでドレープ感のある上質なウールやカシミヤ、リネンやシルク、コットンなど天然素材を採用することが多いです。

また色合いやパターンにも特徴があり、ナポリでは伝統的なダークカラー(ネイビー,グレー,ブラウンなど)はもちろん、深みのある混合色や明るいパステルカラー、各種チェック柄なども好まれます。

7. 動きやすさと快適さ

ナポリ仕立てスーツは、見た目だけでなく着用時のフィット感や快適さに強いこだわりがあります。

しなやかな生地を採用し、芯地や肩パッドを排除しつつ職人が手間をかけて立体的に仕立てるため、身体に自然にフィットしつつ稼働領域が広く動きやすいです。

また、ナポリスーツは肩のラインがナチュラルで締めつけ感が少なく軽やかなため、長時間着ていても疲れにくいのも嬉しい機能性です。

 

8. クラシックなデザイン

ナポリスタイルは、伝統的なクラシックでありながら現代的でモダンなアプローチを取り入れることが多いです。

伝統的なイタリアのクラシック紳士スタイルを重視しながら、時代に合った軽やかさや機能性を取り入れています。

この伝統的普遍性と美的感覚の良好なバランスが、ビジネスマンが着用する紳士服で世界的にナポリスタイルをいつの時代も人気で魅力的なものにしています。

9. ナポリの代表的サルトリア

既成服の代表サルトリアとして Kitonキトン、Attoliniアットリーニ、ISAIAイザイア等があります。

注文服の代表サルト仕立て屋にはルビナッチ(旧ロンドンハウス)、Panicoパニコ、Pirozziピロッツィ、Ciardiチャルディ、Solitoソリート、Formosaフォルモサ、Sabinoサビーノ等が挙げられます。

新興サルトリアも多数存在し、Dalcuoreダルクオーレ、Costantinoコスタンティーノ、Chiaiaキアイア、Pastenaパステナ、Luca Verdecchioルカヴェルデッキオ、Alfonso siricaアルフォンソシリカ等々が挙げられます。

ナポリはスーツ職人の聖地と言われることは今も昔も変わらないのですが、一昔前は伝統的ナポリスタイルを作れる優秀なサルトフィニートが多くいましたが、時代の流れとともに大幅に減っているようです。

「まとめ」

ナポリ仕立てのスーツは軽快で動きやすく、非常にエレガントでありながら実用的な仕立て・デザインが特長です。

ナポリ独特の柔らかい仕立てや身体に立体的に沿ったフィット感、そして肩周りショルダーラインや前身頃のデザイン等に見られる洗練された美しさやディテールが、このスタイルを他都市のイタリアンスーツスタイルと一線を画す魅力的スタイルにしています。

今現在世間のイメージ的に主流となっている軽快なナポリ仕立ては、1960年代にチロパーネ氏が創立した”Kiton”という優良既成服サルトリアファクトリーが世界的に成功してゆくことで典型的なナポリ仕立ての特徴として認知されていった歴史的背景があります。

一方で、格式と伝統を持つルビナッチ派(旧ロンドンハウス)では、昔から構築的コンケーブドショルダーを持つ仕立て、今現在もそんな仕立てを貫く有力サルトリアも存在しています。

このような多様なハウススタイルが息づく伝統的背景により、ナポリスタイルが世界的に最も愛される見本的な人気の紳士ファッションスタイルになっているのです。

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以上、当店がメインで扱う多種多様な特徴を持つナポリ仕立てスタイルの解説でした!

今月のマンスリーコレクション「ナポリ仕立ての柔~Kiton, Orazio Luciano」特集で、この4月に皆様がご自身にとって最高の一着に巡り合えることを願いつつラインナップを揃え、店頭でもお手伝いさせていただいております。

この機会にぜひご来店を心よりお待ちしております。

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