こんにちは。Artigiano-Tokyo Ginza(東京銀座店)
店長の山田です。
東京銀座店10周年として特別な期間となる10・11・12月。
当店のラインナップとしては過去類を見ないほどの
特別なアイテムを取り揃えてまいりました。
この時期、このテーマということで、
当店としてもクラシックウェアで特別な存在を
ご用意する必要があると考えておりました。
クラシックスタイルを完成させる
最後のピースである『重衣料』。
これを持ち込まなければ締まらない。
と当店は考えております。
今回、数年単位でArtigiano ciaoが
集め続けたアイテムを、
過去最大規模で放出してまいります。

今年は東京銀座店10周年という節目にあたり、
“仕立ての集大成”とされるコートにフォーカス。
当店として一つの集大成を司る10周年と
紐づける形で、ラインナップしてまいります。
今までの当店のSNS等では触れきれなかった、
外套(がいとう)としてのクラシコイタリア。
ジャケットやスーツとしてのクラシコアイテムは
多数ご紹介してまいりましたが、
英国式ではなく、イタリア式の手縫いコートに
当店がなぜこれほどまでに入れ込み、
届けたいと思うのか?
今回ブログでもう少し深く、
お伝えしてみたいと思います。
※過去成約個体 Attilini(アットリーニ)による、パターンオーダー(MTO)のコート。ドライビングコートとピーコートを掛け合わせたような作品。アットリーニは実はパターンオーダーに定評があり、並のサルトリアでは太刀打ちできない仕立て力とされる。軽快でありながら王者としてのプライドが垣間見える。
先に、なぜ仕立て品において
コートが『特別』といわれるのか?
お話しておこうと思います。
仕立ての世界で身体の最外層に位置し、
歩く姿や佇まいなど、
着る人の全体像に最も影響を与える存在。
それがオーバーウェアである外套(がいとう)です。
着用者を外気から守り、
そして長年に渡り高い耐久性を保ち、
堂々たる風格で人を包み込む。
頑丈な防寒具であると同時に、
その人のスタイル全体を覆う
外郭として機能することから、
冬季限定の季節品でありながも、
様々な意味で職人が最も手間をかけ
仕上げる仕立て品になります。
そのため仕立てる店側は、
依頼者がどのような環境で過ごすのか
といった生活様式だけでなく、
依頼者のパーソナルな部分までもを
明確に把握しておく必要があります。
依頼者側も、
仕立て屋が最も手間をかけ製作する
アイテムである以上、
その仕立て屋の矜持(きょうじ)を理解し、
敬意をもって依頼する必要があります。
つまり、仕立て品におけるコートは
製作側と依頼側が長い付き合いを重ね、
双方を理解していく中でようやく、
『依頼しよう / 提案しよう』 となる
関係値の”極致”の被服なのです。
※過去成約品 リベラーノ&リベラーノによるビスポークコート。2000年代中期、まだリベラーノが今ほどラグジュアリーブランド化していない時代の個体。堂々たるポロコートだった。ポロコート、あるいはアルスターコートは、重衣料の中でも別格とされ、依頼者も発注にはそれなりの覚悟がいる。特に伝統的な仕立てを行う名うてのサルトリアでは、コートの発注に一定以上の関係値が求められる。一見が依頼すること自体、失礼にあたるだろう。こちらの個体も、それに相応しいオーラを感じさせる作品だった。
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さて、クラシコイタリアにおける
外套=コートの最大の特徴は、
スーツやジャケットのノウハウが
ふんだんに生かされた、
”手縫い”を主軸とした仕立てである点です。
通常、耐久のある地厚の生地は
ミシンで縫製されます。
それを職人の手縫いで”やり切る”という
凄みはやはりイタリアの伝統職人ならではです。
効率を重視すれば、
手縫いでしか構成できない部分は手縫い、
それ以外はミシン縫製で効率化。
という手段が一般的です。
現代における最適解かもしれません。
ですので場合によっては、
他の国の仕立てから『無意味な手縫い』と
揶揄されることすらありました。
しかし彼らにとって伝統の手業(てわざ)こそ
仕立てのアイデンティティであり、
大切な顧客のために手縫いで”やり切る”こと
自体にとても大きな意味が込められています。
オラッツィオ・ルチアーノ Size:46。薄雲が漂う空を思わせる、情緒的なチェスターコート。 ”ハンド感”が強く漂うナチュラルな肩周り、 芯材を使わないセンツァ・インテルノがもたらす軽快な着心地は彼らが得意とする領分。 人のシルエットが透けて見えるさまは、普遍的なチェスターコートとはまるで違う。仕立て・素材・カラーチョイスなど、いたるところにナポリの香りを感じさせる。自然豊かな風土を想起させる、その情景までをも込みにした作品だ。(画像をクリックすると商品ページに飛びます)
それを敢えて私たちの身近な存在に例えるなら、
お母さんが子どものために縫った、
裁い物が持つあたたかさ。
ちょっと縫製が歪んでいたり、
垢抜けない部分があったり。
しかしそこに宿る無償の愛や深い献身性は、
まぎれもない『本物』であるはずです。
その『本物の心』が、
イタリア人が最も大切にする
”Mamma(マンマ)”の精神を通して、
モノ作りに色濃く反映されているのです。
製品としての結果だけでなく、
一連の仕立てを構成する手段までをも、
人への愛を込めた”心の形”までをも含め、
彼らは『クラシコイタリア』を
標榜してきたわけです。
それがクラシコイタリアを形づくる、
言語化できない魅力の正体の一つです。
その人の手業がもたらす出で立ちは、
外見やスペックで計ることはできない
温かみや、ある種の凄みを宿しています。
旧ラ・ベラ(現ルチアーノ)Size:46。カシミヤ100%のチェスターコート。『Manmaの精神』が最も分かりやすいブランドでもある。ハンド感を強調した個体が多く、ときに『やりすぎ』と揶揄されることさえある当ブランドだが、実は手仕事がもたらす人の温度感を真にとらえているサルトリアだ。彼らは洋服を通してナポリ仕立ての原点を絶対に曲げていないと言える。この個体はラベラらしい柔らかさとグラマラスさを、肉厚なヴィンテージカシミヤで見事に表現。ジャケットのような着心地で、柔軟な可動性も含めジャケットレスで羽織るのが向いている。※ラベラはサイズ表記よりハーフサイズ程細身です
この、
”目に見えないけど、確かに見え、感じる”
ことができるアイテム。
プロダクト至上主義の現代において
スペックで計れないことは
馬鹿にされる要素かもしれませんが、
同時にその対極として再び光り輝き始めた存在が
クラシコイタリアの外套でもあります。
徹底的に人の体の動きを意識して
作り込まれた構造。
そこから生み出される、
生きる人間としての動的な美。
全てが一本の線として存在しているのが
クラシコイタリアのコートです。
旧ラベラのチェスターコート(前述個体)。2000年頃の個体。本来仕立て品で発揮される『Mammaの哲学』を、既成で表現しようとしたのがルチアーノだった。オラッツィオ・ルチアーノ氏は穏やかで愛情深い人物でも知られる。『多くの人にナポリ仕立てを』と、価格を抑えた展開を行っていたのも印象的だった。そんなルチアーノも、時代の物価高に押され、近年ついに大幅値上げに踏み切らざるを得なくなった。この個体は、そんな多くの人に本物のナポリ仕立てを届けたいという氏の願いが強く反映された時代のモノだ。
誰かが誰かのために仕立てた事実。
それを受け継いで私たちが羽織り、
またそのバトンを受け継いで残していく。
今までアイロンワークや縫製については
散々語り尽くしてきました。
生地、線、構造、内部の作り。
そのどれもがクオリティを確かに物語っています。
しかし今、コートという外郭を通して、
私たちは更にその先、あるいはもっと
核心に宿る部分を明らかにし、
お客様の人生を縁どる『最高の1着』を
お届けしたいと考えております。

私たちの役割は、たくさんのクラシコイタリアの
アイテムを並べて売ること、ではありません。
過去に積み重ねられた”仕事” ”温度”を読み取り、
今を生きるお客様に最適なアイテムをご紹介し、
繋いでいくことだと考えております。
こうして今に残る一着一着を、
中古・資産性の有無といった価値を超え、
橋渡しを担えたらと思います。
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あらためまして、前半便では、
ダルクオーレやルチアーノ、
ファクトリーブランドである
カルーゾ/ベルベストの別注品など、
比較的最近に仕立てられたモデルを
中心に展示販売いたします。
まずはクラシコイタリアの入り口に
立って頂けるよう、
このような『分かりやすい』
ラインナップとしました。
ダルクォーレ Size:42-44。ナポリの鬼才と呼ばれた仕立て職人:ルイジ・ダルクォーレ氏(故)が手掛けたダブルコート。 ポロ/アルスターコートをベースに軽やかさとスタイリッシュさを取り入れた、氏ならではのビスポーク個体。その枠にとらわれないスタイルは賛否両論あったが、今やクラシコイタリアを牽引するサルトリアの一つであると考えると、氏の行った試みは、文化やモノを未来に託す上で重要な行いであったと気づかされる。こちらも重ね着ではなく、動的な魅力を最大限発揮するジャケット的なカジュアル使いを推奨します。(画像をクリックすると商品ページに飛びます)
スティレ・ラティーノ Size:44。アットリーニのセカンドブランドで知られる。高品質な生地と時流を 適度に取り込んだ『モーダ・クラシコ』スタイルが特徴。 ポロ/アルスターコートがモチーフのディティール。袖先はターンナップカフス(ダブルカフスの一種)ではなく、全体的にチェスターコートのような軽快感が漂う。 芯材を使わず靡きを意識した1着。(画像をクリックすると商品ページに飛びます)
そして後半は、今は亡き職人たち仕立て作品、
ナポリ仕立ての黄金期を支えた
『サルトリア全盛期』の個体たちを招集。
現在では失われた手織りのファブリックを
使用したスペシャルなお品も登場します。
後ほどご紹介します、12月20日(土)〜21日(日)の
10周年アニバーサリーイベントに合わせ、
当店で長らく保存してきた、
集大成としての個体達を一挙に公開いたします。
※10周年記念イベントの詳細については
後日ブログにてご紹介いたします。
※画像はイメージになります(過去成約個体)。このレベル、あるいはこれを凌ぐ個体が後半に投入される予定。人生の終着点として誰かが仕立てたコートは、誰かの人生に受け継ぐこともまた考慮されています。敢えてビスポークでない方法で商品を届ける。そのバトンを渡す役割が、当店なりのスタイルです。
当店としても、10周年という節目をもとに、
もっとクラシコイタリア、
そしてナポリ仕立ての素晴らしさを
深く知ってご愛用頂けるよう、
新たな目線や、本来一番最初にお届けする
必要がある核の部分を改めて、
丁寧にお伝えしていこうと考えています。

今月も皆様のご来店、
心よりお待ちしております。
Artigiano-Tokyo Ginza

