こんにちは!
Artigiano-Tokyo Ginza(東京銀座店)です。
3月のテーマはクラシコが誇る「構築の流儀」。
“クラシコイタリアの源流は構築にこそある”
という史実を基に、イタリア南北の構築的仕立ての
違いに迫るテーマとしました。
軽快かつナチュラルなスタイルが
イタリアンスタイルとして市民権を得る中、
敢えて源流である英国式のスタイルを
『残す』という選択をしたサルトリアたち。
その選択に宿る哲学と、
求められるものへの自負を体現する
“仕立ての凄み”にフォーカスしていきます。
本テーマでは南北の”構築”に対する視点や解釈の違いを
北を代表する『カラチェニ派』、
南を代表する『旧ロンドンハウス派』に大別し、
それぞれの流派を通して比較するという
今までにない試みで展開してまいります。
過去何度か各地方の仕立てをテーマに組み込んできましたが、
南北に細長いイタリアは北と南では天候や文化が大きく異なり、
仕立てもそれぞれ独自の進化を遂げてきました。

ジャンニカンパーニャ ジャケット(super130’s使用)Size:48。
貫禄ある佇まいの中にモダンさを内包した1着。滑らかな生地感と色柄も相まってややカジュアルな印象。ミラノ仕立ての中で最も大規模にパターンオーダー体制を充実させているジャンニ・カンパーニャ。パターンオーダーとは言うものの、その仕立ては完全にフルオーダーと同じ工程を踏んでおり、一般的なパターンとは一線を画しています。(画像をクリックすると商品ページに飛びます)
北に位置するミラノでは経済の中心の街として発展。
英国の仕立てを内包した、上品で厳格な
ブリティッシュスタイルが主流になりました。
どっしりとした生地にしっかりと芯材を用いるミラノ仕立ては、
特にサヴィルロウの仕立てを色濃く残していると言えます。
男性らしさを強調した、甲冑を思わせる力強い
シルエットが大きな特徴といえますが、
ミラノ仕立てに携わる人々が20世紀のモードスタイル
誕生の瞬間に居合わせていることからも、
『時代の潮流』を見定める鋭い先見性と才覚を
彼らは持ち合わせています。
ジャンニ・カンパーニャやティンダロ・デ・ルカ
などの重鎮サルトの作品が力強くもモードな
要素を併せ持っているのはある意味必然とも言えます。

ティンダロ・デ・ルカ ネイビースーツ Size:44-46。ミラノ仕立てで最も権威あるサルトであった故:ティンダロ・デ・ルカの作品。ネイビーのジャガード無地というハイセンス過ぎる生地にピークドラペルを採用したシングルスーツ。匿名性と洒脱さを最高峰の仕立てとセンスで表現した1着です。当店としても出し渋るレベルのアーカイブ品。(画像をクリックすると商品ページに飛びます)
対してナポリ仕立ては温暖な気候で自然豊か、
観光・リゾート地も多いことからわかるように
欧州貴族の休息地としても栄えてきました。
ナポリ仕立てが持つ、肉体の延長線にあるかのような
着心地を当店は『第二の皮膚』とよく表現しますが、
温暖な気候に合わせて不快感を極力取り除き、
自由さを体現する英国スタイルが追求されてきました。
過去関連ブログ
【①アットリーニ】
【②ナポリ的構築の解釈】
クラシコの真髄である
『着心地とクラシックの共存』を
極限まで高めたのがナポリ仕立てであり、
その始祖はナポリの名門、
旧ロンドンハウスにあると言えます。
これらは土地柄的に貴族階級との交流が
多かったことが影響しており、
当時の前衛芸術や新たな文化的思想を
吸収していった結果とも言えます。

『ロンドンハウス』は初代”ジェンナーロ・ルビナッチ”が、”ヴィンツェンツォ・アットリーニ(あのアットリーニの初代人物)”をキーマンに迎え、今から98年前に創業した老舗中の老舗。 この2人はルビナッチの義父の店で共に働いていた仲間でありました。 ナポリでは英国的な紳士スタイルは一種のステータスでした。初代ルビナッチも、その店名の通りロンドンハウスを『サヴィル・ロウの仕立てを受け継ぎ、サヴィル・ロウの延長線上にある店』と位置付けていました。 そのような背景も影響し、ナポリの歴史の中で格調高い仕立てと言えば『英国調』なのです。 ※旧ロンドンハウスは2000年代初頭に一族の名を冠する 『ルビナッチ』に改称し、現在も営業と続けています。
旧ロンドンハウスはアットリーニ、パニコ、ビソーネ(コスタンティーノ)など
ナポリ仕立てを牽引してきた多くの巨匠たちを排出してきました。

パニコ ビスポークジャケット Size:46。エッジが利いていながら柔らかい。
威厳がありながら情緒的。
この表現力が生きる伝説と呼ばれる所以。
構築さを残したサルトリアはナポリに
多数存在しますがパニコの表現方法は
クラシックでありながら現代で通用する
構築加減です。

スカルピーノ ネイビージャケット Size:42-44。当ブランドは”コスタンティーノ”の前身、 仕立て職人の故・ビソーネ氏と フィッターであるコスタンティーノ氏が タッグを組んだ直後のブランド名義。 こちらの個体はビソーネ氏が職人として 最も円熟していたであろう時代の1着。 ビソーネ氏は様々な有力なサルトリアの 黒子として淡々と仕事をこなしてきましたが、 ナポリ随一の腕前とも言われた彼の”仕事”、 そのマルチさが垣間見える個体です。 この個体は剛と柔が驚くべき次元でバランス。 肩周りは確かな構築感を伝えると同時に、 たおやかさすら感じさせるラインどりとなっています。 構築感を保ちながらも動を意識した モノづくりはまさに南”の構築感であり、 同時にビソーネ氏のおそるべきマルチな 仕立ての才能が詰め込まれた逸品。
彼らはその後独自のハウススタイルを確立してきましたが、
そのルーツは旧ロンドンハウス。ひいてはサヴィル・ロウにあるのです。
過去関連ブログ②
【コスタンティーノとロンドンハウス】
【パニコとチャルディ】
南北の仕立てを大別すると、
・厳格なブリティッシュスタイルが好き。
・洋服には重厚さを求めたい。
・体格をバルクアップさせて見せたい。
・英国系テーラーより着心地を良くしたいが、
イタリア色はあまり出したくない。
という方に北イタリアの構築はお勧めです。
対して、
・カッチリ感の中にたおやかな色気が欲しい
・クラシカルで威厳のある装いをさらりと着こなしたい。
・動的な美やドレープを意識したい。
・カジュアルダウンしたアイテムと
ミックスして活用したい。
という方には南イタリアの構築がお勧めといえます。
クラシコイタリアの源流により近い
“ミラノ仕立て”と、
貴族文化を取り入れる中で進化した
“ナポリ仕立て”。
それぞれの魅力は相対評価で語ることはできませんが、
どちらが好きか?どちらがより自身に合うか?は
明確に異なるはずです。
今回は日本ではほぼ出回らない貴重なサルトリアの
ビスポーク個体も入荷しており、
現地買付品など当店にしかできない
ラインナップを一挙に公開いたします。
北と南の仕立の違いだけでなく
各サルトリアの”構築”の表現の違いを存分に
楽しんでいただけるテーマとなります。
皆様のご来店をお待ちしております。
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【オーナー在店期間】
3月の丹下オーナー在店期間は
3月15日(土)・3月16日(日)の2日間です。
毎月ご好評頂いております
『トレードアップ・フェア』
もこの2日間限定での開催となります。
なお、コラボショップであるWhite Kings では
本テーマに合わせてクラシックスタイルの
ヴィンテージOMEGAの展示を強化しております。
是非併せてご覧くださいませ。
Artigiano-Tokyo Ginza